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結局・・・目指したいのは「統合」?「選択」?2023.11.09

 今回は・・・障がい福祉・障がい児福祉に関わる方ならば、少なくても1度は耳にしたことがあるであろう「インクルーシブ教育」について触れてみたいと思います。

 では早速ですが・・・「インクルーシブ教育」について軽く押さえておこうと思います。

【インクルーシブ教育】

1.共生社会の形成にむけて:(1)共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システムの構築、(2)インクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進、(3)共生社会の形成に向けた今後の進め方(※文部科学省HP抜粋)

これまで、障がいを持っていることで「健常者社会」から乖離させ機会を奪いより「社会的弱者」を作り出す構造を家族や支援者を含む「健常者」が創ってきたことは事実であり今もそれは根深く続いていることは間違いありません。「障害者の権利に関する条約第24条」からも謳われているように、そうした社会は分断と差別を生み「いろんな人」で形成され共生する社会あるいはそれを目指す社会福祉の観点からは反する方向性です。

2.就学相談・就学先決定の在り方について:(1)早期からの教育相談・支援、(2)就学先決定の仕組み、(3)一貫した支援の仕組み、(4)就学先相談、就学先決定に係る国・都道府県教育委員会の役割

 以前のブログ「障がいは「個性」か?「障害」か?」で障がいの定義について触れましたが、定義に該当する児童だけでなく該当しない・・・いわゆる「グレーゾーン」の児童も相談や支援を受ける権利を有するものです。また、1度決めた就学先や在籍する教室は固定ある必要もなく、その時のあらゆる状態において鑑みる必要があります。

3.障害のある子どもが十分に教育を受けられるための合理的配慮及びその基礎となる環境整備:(1)「合理的配慮」について、(2)「基礎的環境整備」について、(3)学校における「合理的配慮」の観点、(4)「合理的配慮」の充実

 「インクルーシブ教育」「障害者差別解消法」「合理的配慮」はどれも密接した関係性を持っています。なぜ合理的配慮が必要なのか?それは誰のためか?を考えれば考えるほど、対象の障がいの種別や程度、環境やそれらを含むキャラクターなどの状況から時には極端な偏りが生まれることで分断や偏見・・・あるいは差別を生みかねません。

4.多様な学びの場の整備と学校間連携等の推進:(1)多様な学びの場の整備と教職員の確保、(2)学校間連携の推進、(3)交流及び共同学習の推進、(4)関係機関等との連携

 よく「教員数が足りない」という声を聞くことはありますが、実は大きな変化はないものの構成されている年齢層は中高年が増えてきている状態です(文部科学省:令和元年度学校教員統計調査(確定値)の公表について)。ここから考えられることは、教員のこれまでの労働環境に加えインクルーシブ教育や合理的配慮の取り組みが加わったことでより業務の細分化が起こり追いついていないことや、それらを十分に教育として提供できる環境が追い付いていないことなどが考えられます。

5.特別支援教育を充実させるための教職員の専門性向上等(1)教職員の専門性の確保、(2)各教職員の専門性、養成・研修制度等の在り方、(3)教職員への障害のある者の採用・人事配置

 この概要が公開されてやっと10年ちょっとが経過した現在で(1)~(5)だけでなくこれまでの1~4が整備・運用されていないのにはいろんな要因が考えられるだけでなく常に価値観や考え方がゆるやかな流動性の中にあることで変化に既存のものが追い付いていないことが大きいように思います。

 ここまで非常に薄く簡易的に押さえてみましたがつまりは、僕たちを含むこの社会にはいろんな人が共存・共生しておりその社会の構成員の教育を行う機関ではより「共生・共存」するためにお互いを知ることで必要な配慮や措置を講じていきましょうと。そのためには専門分野の人的リソースの確保や育成か課題となります・・・といった内容だと解釈しました。

 今回改めて1つずつ追って行く際に、1~5までの全てに掘り下げてみたい点がありましたので、また次回以降で触れてみようと思います。

最後に、「インクルーシブ教育」というキーワードを耳にするようになってから、特別支援学校の要・不要論争がセットになることが多いのですが、個人的には「あり」か「なし」か?という2極よりも両方あって必要な人が選べる状態が望ましいのではないかなぁと思います。

 個人的なことを述べると、主に「あうとぷっと」での業務に関わることで両方の教員の方々とコミュニケーションを取ってきた中で、特別支援としての考え方や支援の在り方はいわゆる障がいを持っていない定型の児童にも対応できるものが多いように思いますが、逆はほとんど感じていません。先程は「選べる状態が望ましい」とは言いましたが、敢えて「なし」を選ぶのだとしたらそれは、特別支援学校の考え方や支援の在り方だけでなく設備や機能までもがベースとなった機関であれば、「なし」でも良いのかなぁと思いました。またこの議論が始まると、途端に個別のケースになりがちだったり非常に極端な事例を出されることも少なくないのですが、当然グラデーションがあるテーマなのでその中間であるグレーゾーンに置かれている方々のことも念頭におかなくてはならないと思っています。